俺にぞっこんLOVEの義理の妹がある日突然家にやってくる

なんて夢物語をいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいいような話だが、それでも俺がいつまで兄にぞっこんな妹などという想像上の愛玩動物を信じていたかと言うとこれは確信をもっていえるが最初から信じてなどいなかった。初めてプレイしたエロゲーに現れた妹はディスプレイの向こうの住人だと理解していたし、記憶をたどると一緒にプレイしていた友達もあれが本物だとは欠片も思っていなかった。そんなこんなでわざわざ実妹がいる人間に指摘されるまでもなく、突然現れる義理の妹の存在を疑っていた賢しい俺なのだが、ツンデレお嬢様や窓伝いに部屋に侵入してくる幼馴染や俺にばかり突っかかってくる風紀委員やドジっ娘メイドロボや悪霊と戦う巫女さんなどなどギャルゲ的エロゲ的ヒロインたちがこの世に存在しないのだということに気付いたのは相当後になってからだった。
いや、本当は気付いていたのだろう。ただ気付きたくなかっただけなのだ。俺は心の底からツンデレお嬢様や窓伝いに部屋に侵入してくる幼馴染がいる生活を望んでいたのだ。俺が朝目覚めて夜眠るまでのこのフツーな世界に比べて、ギャルゲ的エロゲ的物語の中に描かれる世界の、なんと魅力的なことだろう。
俺もこんな世界に生まれたかった!
(略)
いるワケねー……でもちょっとはいて欲しい、みたいな最大公約数的なことを考えるくらいにまで俺も成長したのさ。